IDOLY PRIDEの顧客ターゲティングに関するひとつの仮説
相変わらずなにか掴みどころのない展開が続くIDOLY PRIDE。
今回は、「一体どんな計画で進んでいるんだろうなぁ」というところを妄想してみる回です。
別にこういった分野の専門家というわけではないので、与太話程度に聞いてもらえればと思います。
- 1.仮説:「IDOLY PRIDEのターゲット、実は女子中高生じゃね?」
- 2.外部環境から― 「ポスト女児アニメ」の空位
- 3.内的要因から― サイバーエージェントの持つ強み
- 4.中高生に最も訴求できる”声優”・神田沙也加
- 5.モデルケースを想像してみよう
- まとめ
1.仮説:「IDOLY PRIDEのターゲット、実は女子中高生じゃね?」
読んで字の如く、というところなんですが、いろいろとIDOLY PRIDEの周辺を探っているうちに自分の中でこういう考えが浮かんできました。
どうせしばらくは本筋が進まなそうなので、まあこうしていろいろと予想するのもいいじゃないですか。
ということで、この考えに至った経緯を以下に開陳していきます。
2.外部環境から― 「ポスト女児アニメ」の空位
皆さんも御存知の通り、既に世の中にアイドルを題材にした2次元コンテンツって溢れかえっています。
アイマス、ラブライブらを筆頭に、WUG、ろこどる、ナナシス、バングドリームなどなど……昨今のブームに乗って様々な作品が現れるさまが2010年代は多く見られました。
最近でもまだそのブームはとどまることを知りません。「声優育成ゲーム」と銘打って送り出されている『BATON=RELAY』や『CUE!』なんかも、実態は曲を出して歌って踊ってが含まれるため、その流れの一部としてみなせるでしょう。
また、女児向けアイドルアニメに目を移すと、『アイカツ!』『プリパラ』シリーズが長年に渡りしのぎを削っている状況です。
このように、アイドルコンテンツは大きく分けて女児向けとそうでないもの(便宜上、大人向けと呼びましょう)とに二分化されますが、それぞれの市場で活況を見せています。
一方で、その両者はヌルっと同じような括りにいながらも、例えば小学校高学年がコロコロコミックを卒業したら次は少年ジャンプ、というような感じの、女児向けアイドルアニメ→大人向けアイドルアニメへの定番のステップアップが設けられてるとは言えない状況だと言えると思います。
現状、その狭間の供給は『ラブライブ!』や『バンドリ』が担っているようです。
前者は、長らく続いたスマホ向け音ゲースクフェス一強時代に築き上げたポジションが強いのと、地に足のついた可愛さがウケているのかなと思います。
後者は、出だしがどうかはさておき、意図的に低年齢層へのアプローチを増やすフェーズがあったことが伺えます。
武道館で感じたのは、お客さんの層が広がったこと。アプリゲーム『バンドリ! ガールズバンドパーティ!(以下、ガルパ)』が好調なこともあり、女性のお客さんが一気に増えました。夕方にアニメの再放送をすることで、小さいお子さんのファンの姿も目立ち始めています。今後は、さらに年齢層にも幅が出て来ると思います。
とはいえ、両者ともに最初から低年齢層を狙う意図があったわけではないということは言えるかと思います。
『ラブライブ!』はそもそもが電撃G's magazineでの読者参加型企画で、一発当たるまでは知る人ぞ知る作品であったことは語り草となっています。
また、『バンドリ』もはじまりのきっかけは愛美のギターということで、途中からのシフトはあったにせよ、企画立案当初からキッズ相手の商売を睨んでいたというような意図は感じられません。
つまり、現状女児向けアイドルアニメと大人向けアイドルアニメの隙間の需要をキャッチしているのは『ラブライブ!』『バンドリ』だが、それらはどちらかと言えば「意図しないラッキーパンチ」の結果である、ということが言えそうです。
そういった意味で、IDOLY PRIDEはこれらの先行コンテンツにはない「最初から意図的に低年齢層をターゲットとして織り込んでいる」という特徴があるのではないかと考えました。
以降でそう考えるに至った理由を説明していきます。
3.内的要因から― サイバーエージェントの持つ強み
3-1.まずはこのCMを見てほしい
こちらは、最後の1人であった長瀬麻奈の情報が公開されたタイミングで同時に出された、アニメ版のCM映像です。
最初に見たときには、これまでのコンテンツの展開とは大きく異なるアプローチに見え、結構な違和感を覚えたものでした。
で、「なぜ違和感を覚えたのか」を考えたんですよ。
違和感の正体1 「麻奈、キャラ違くない?」
動画開始1秒、長瀬麻奈と思われるキャラクターが下からピョコンと飛び出してきます。
この時点で、なんか思っていた長瀬麻奈と違う印象を抱きました。
だって、こっちの画像
(公式HPより)
やプロフィールでは「完全無欠、高嶺の花」といったイメージなのに、ほっぺたまん丸でなんだかものすごくかわいらしく、幼いイメージです。
どうしたどうした?という感じ。
違和感の正体2 「熱くて泣ける青春アニメ」の連呼
CMでは、その後
「IDOLY PRIDEは、熱くて泣ける青春アニメです。もういっかい言います。IDOLY PRIDEは熱くて泣け…TVアニメ来冬放送開始」
という男声でのナレーションが入ります。
「熱くて泣ける」を連呼するのって、こじらせたオタクであればあるほど反発すらしかねないタイプのアプローチなんじゃないかと思います。前に「ドラ泣き」というキャッチフレーズで似たような話題があったかと思いますが。
「熱くて泣ける」を連呼されるとなんだか薄っぺらく思えてしまい、ここまで玄人好みの楽曲制作陣や興味深い声優のラインナップで耳目を集めていたコンテンツとはまるで別物のようなプロモーション戦略だと感じました。
と、いうところで。
そう感じたのなら、じゃあ逆に何が意図されているのかという点について考えてみましょう。
3-2.このCMは「どこで」「誰が」見るのか
今はまだYouTubeでしか見られませんが、今後IDOLY PRIDEのアニメが実際に放映開始に近づいてきた時期を想像しましょう。
このCMが流れるとして、「どこで」流れるでしょうか。
「アニメの放送局」というのが正解かと思われますが、その中でも恐らくぶっちぎりでCMが流されるであろう媒体はどこでしょう?
答えは、ABEMAなのではないかと思います。(最近Abematvから改称したらしい)
ABEMAを見ているとわかりますが、けっこうな頻度で自社コンテンツのCMが流れます。こないだ緊急事態宣言が出た日にずっとつけていたら「M 愛すべき人がいて」のCMが無限に流れていた。
思うに、この「熱くて泣ける」を連呼するCMはそんな感じでABEMA内で頻繁に流されるのではないでしょうか。
続いて、「誰が」見るのかという点について。
ここで、冒頭に挙げた「女子中高生」なのではないか、という仮説を引っ張ってきたいと思います。
3-3.ABEMAの持つ女子中高生に対する強力なチャネル
アニメとは離れますが、ABEMAは女子中高生に対して強力なチャネルを持っています。
1月に行われたIDOLY PRIDEの生放送でもその片鱗が垣間見える場面がありました。
https://youtu.be/aSMp_NrXpYo?t=3624
(動画がプロテクトされており埋め込めなかった。1:00:24あたり~)
番組内で行われたクイズのコーナーで、
「JC・JK流行語大賞2019のモノ部門5位「〇〇ちゃんには騙されない」
〇〇に入る言葉は何?」
という問題が出されたときのこと。(答えは「オオカミちゃん」だそう)
解答者の一人である戸松さん(と視聴者の一人である我)は「わからん!!!!」という表情を浮かべていましたが、司会の豊崎さんが「ちなみにこれ知ってる人~?」と尋ねるとその場にいた声優たちの12人中10人が手を挙げている様子が映されていました。
この光景が象徴するように、若い女性の間でABEMAのコンテンツが人気である、という事実がどうもあるようです。
実際サイバーエージェント側も強みとして認識しているようで、2020年の第1四半期(2019/10-2019/12)の決算資料の中にこのような記述が。
(黄色マーカー・赤丸はこちらで付けました)
15歳~19歳の女性の人口が全部で300万人弱で、そのうち3人に1人が視聴している。つまりその年齢層のうち100万人近くに視聴されているのだということが述べられています。
また、サイバーエージェント自らJKに聞いてみている記事もありました。
-AbemaTVのオリジナル恋愛リアリティーショーは、日本の女子中高生の3人に1人が視聴しているというデータがあるのですが、肌感としていかがですか?
りこさん:その感覚はありますね。というか、もっと多いかなとも思います。クラスのどのグループでも共通の話題になっているので。
-どのグループでもということは女子だけではなく、男子も見ている?
みなみさん:はい。男子も含めてクラスで話題になっていますよ。男女関係なく“オオカミくん予想”しています。
りこさん:男子も“出演者のあの子可愛い“とかよく話しています。
みなみさん:男女共に見ていて、”2人に1人”くらいの感覚が私たちの中ではありますね。
(全員、うなずく)
自分がJKのとき(←存在しない)にはABEMAが普及していなかったので、若くない域に片足を踏み入れているオタクはこの辺のパラダイムの変化を認識しておいたほうが良いかもしれませんね。
ということで、実際にIDOLY PRIDEにおいて活かされるかどうかはわかりませんが、ABEMA(=サイバーエージェント)が女子中高生に対して強い訴求力を持っているということがおわかりいただけたでしょうか。
そして、もしその訴求力を最もわかりやすい形でIDOLY PRIDEに活用するとしたら、ずばり「恋愛リアリティショーの合間に例のCMを流す」パターンが考えられます。
だとすれば、例のCMのあからさまにかわいい全振りに変えられた長瀬麻奈の姿も、「熱くて泣ける」の連呼も、まだ高度なリテラシーを有しない中高生に対し的を絞った極めて伝わりやすい宣伝手法なのだと考えることができるのではないでしょうか。
そうして中高生に対し『IDOLY PRIDE』という存在を刷り込んだ後は、実際にコンテンツに引き込まなければなりません。
そこで意味を持ってくるのがあのお方です。
4.中高生に最も訴求できる”声優”・神田沙也加
ここまでで、「ABEMAという自社資源を活かして女子中高生に『IDOLY PRIDE』を認知させる構図」を検討してきました。
サッカーで言えば、ゴール前までボールを運ぶ過程のお話です。
ここでは、では誰がゴールを決めるのか?というところに話を進めていきましょう。
ここでその役目を担う人こそが、スフィアでもTrySailでもなく、「長瀬麻奈役を仰せつかった *1」という神田沙也加さんその人なのではないでしょうか。助っ人外国人かな?
みなさん御存知の通り、神田さんは2014年春に国内公開のディズニー映画『アナと雪の女王』でアナ役を演じています。
アナ雪ブーム、もう6年も前なんですね。
そう。6年も前なんです。
この時点でお気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、今の女子中高生、つまり今の12歳~18歳って、アナ雪ブーム時にモロに流行の中心の小学生だった世代なんですよ。
そんな世代に「アナ役の人」という触れ込みで宣伝すれば、かなりの人数がピンとくるのではないでしょうか。
その観点で行くと、今現在アニメに詳しい・詳しくないに関係なく、「女子中高生の間で最も知名度のある声優」こそが長瀬麻奈役・神田沙也加さんと言えるのかもしれません。
IDOLY PRIDEの出演者のうちミューレ声優は自前、星見プロの残り5人はオーディションという中で、神田さんだけが唯一オファーという形で出演するのは、こういった知名度の面も買われてのことなのかな?と思いました。
5.モデルケースを想像してみよう
さて、ここまでの情報を総合すると、こんなストーリーが描けるのではないでしょうか。
プリパラやアイカツを見て育ったが、なんかそれらももう子供っぽいかなと思う年頃。
中学、高校と新しい環境に足を踏み入れ、親からスマホを買ってもらった。
LINEを登録して、いろいろアプリを入れて、さあ次はどうしよう…となったときに、クラスで出会う新しい学友たちとの共通の話題はABEMAの恋愛リアリティショー。
それに釣られ、自分もABEMAを見てみると、そこには「熱くて泣ける青春アニメ」のCMが。
気になって作品を調べてみると、なんとアナの声の人が出ているではないか。
ちょっと見てみよう。あ、この白石千紗ちゃんって子かわいいね……推す……え?この子の声優さんって高3にして出演作多数、有名作にも名を連ねる期待の新人声優さんなの!?
というような。
そろそろアラサーの独身男性がJCJKのモデルケースを妄想するのは犯罪了解!w
世の中こんなふうにうまくいくわけはないですが、ここまで述べてきた通りの意図があるのだとすれば想定されるターゲット層ってこういう感じなのかなと思います。
そのうち、こういうマーケティング戦略の話とかも聞いてみたいけど表に出す気なさそうだよなぁ…
まとめ
ということで、要約すると
・『アイカツ!』『プリパラ』のような女児向けアイドルアニメと、『アイマス』『ラブライブ!』のような大人向けアイドルアニメの間には連続性がなく、実は供給のエアポケットとなっているかもしれない(現状では『ラブライブ!』『バンドリ』などがそこに対してアプローチできている)【推測】
・IDOLY PRIDEは楽曲派やミューレのオタク、あとは数少ないオーディション組声優のオタクなどを抱え込む一方で、その「ポスト女児アニメ」の層もターゲットのひとつとする意図があるのではないか【推測】
・なぜなら、ABEMAが抱えるお得意先のひとつとして「女子中高生」があり、サイバーエージェント側もそこに自覚的であるから【事実】
・「熱くて泣ける青春アニメ」を連呼する、オタクからすれば一見軽薄に思えるCMは、そこに対するアプローチ施策のひとつなのではないか【推測】
・神田沙也加さんの起用は、その女子中高生が小学生だった頃にブームとなった『アナと雪の女王』での知名度を買ってのものなのではないか【推測】
という内容をお送りしてまいりました。
こうしてまとめてみると、推測ベースの議論がずいぶん多いですね。
最初にも言った通り、与太話程度にとどめておいていただければと思います。
いろいろとIDOLY PRIDEの記事があちこちから出てくるのを期待しているんですが、まだそれほど多くないので自分の記事ばかりがどんどん増えていきます。(こないだ、Qualiarts作品のファンが書いた記事があって非常にためになった)
もしよければ、みなさんもIDOLY PRIDEに関する記事を書いていこうな。
IDOLY PRIDEについて深めていきながらずーっとこういうことを思い浮かべていたので、ようやくアウトプットできてよかったです。
貴重な日曜日の丸一日かかった。
*1:https://idolypride.jp/news/2020/03/22/282/ より。「仰せつかった」ということは、すなわちオファーを受けたのではないかと思われます。