IDOLY PRIDE第8話「君は君のままでいい」考察
気づけばもう8話、そして3月を迎えました。
冬クールももう終盤、IDOLY PRIDEもついにNEXT VENUSグランプリの幕が上がりました。
次々にわかる新事実
今回はなにしろ、いろいろと重大な事実が明らかになりました。
以下に今回初めて言及されたり、初めて出てきたりして重要そうなことを列挙していきます。
やはり第14回決勝の麻奈の相手はLizNoirだった
同じ事務所のTRINITYAiLEとの合同記者会見の場で、莉緒が「3年前の決勝、その直前で私たちの時間は止まったまま」と述べています。
前回も言及した通り、やはり麻奈と決勝を戦うはずだった相手はLizNoirだったのです。
だとすると、やはりLizNoirは決勝に勝ち進むだけのポテンシャルを持ちながらも、その場に立つチャンスすらないまま3年の時を過ごしていたということです。
今回のNEXT VENUSグランプリにおいても予選をトップで勝ち抜いており、3年もの間待ち望んだチャンスに期するものは計り知れません。
また、たまたま顔を合わせたスタジオの廊下で、莉緒は琴乃に対し「デビューからずっと麻奈のことを見ていた身からすると、琴乃は麻奈の劣化コピーでしかない」という強烈な一言をかましています。
麻奈の偉大さが改めて浮き彫りになる一方で、これだけの実力を見せつけている莉緒ですら、麻奈の残した幻影に捕らわれているのだということが伺えます。
「Shock out, Dance!!」で「もう会えない人に会いたがる」という歌詞がありましたが、本当に戦いたかった相手である麻奈がもうこの世にはいないという事実もまた、決勝の舞台に立てなかったこと同様に莉緒を苛んでいるのでしょうか。
麻奈の妹である琴乃に当たり散らすような姿を晒す背景には、そんなやりきれない思いも見え隠れするように思います。
トーナメント発表
NEXT VENUSグランプリのトーナメントが発表されていました。
今回やりあった琴乃と莉緒が率いる月ストとLizNoirが左の山、そして前々回の記事で「両者の曲の歌詞が酷似している」と指摘したところのサニピとTRINITYAiLEが右の山。
両者が勝ち進めば、同じ山同士は準決勝で対決します。
ずっとそんな予感はしていましたが、こうもきれいなトーナメント表になってくるとは。
今回琴乃と莉緒が火花を散らしたように、TRINITYAiLEとサニピもまたしのぎを削ることになるのでしょうか?
さて、16チーム中15位・16位でギリギリ滑り込んだサニピと月ストが、千紗ちゃんが願うようにNEXT VENUSグランプリの場で同じ舞台に立つには、それぞれ1位・2位通過をしている優勝候補のLizNoir・TRINITYAiLEを倒し、決勝の舞台まで駒を進めなければなりません。
とはいえ、その4グループ以外の実力は正直わからないので、イメージしやすそうな画像(自分だけ)を持ってきました。
これは2017年のサッカー天皇杯のベスト16(唐突)ですが、このベスト16の組み合わせの中から決勝が各山で最も格下の筑波大vs長野パルセイロになるようなもの…と考えると相当厳しいように思います。
そんな、よっぽどのジャイアント・キリングを達成しなければ、決勝で星見プロダービーは実現しないのです。
ここまで順風満帆に歩みを進めてきている星見プロですが、勢いそのままに優勝候補筆頭であるバンプロ勢までも蹴散らして決勝の舞台までたどり着くのか、あるいは……?というところが、いよいよ盛り上がってきました。
さくらの「心臓移植」
これまでは「さくらの体のこと」「胸の手術痕」というところまでで伏せられていましたが、とうとう「心臓を3年前に移植した」という事実が明るみに出てきました。
その3年前といえば、麻奈が事故死した年。
さくらの定期検診に同伴した牧野は、病院の先生に「星見プロは3年前に長瀬麻奈というアイドルを事故で亡くしていて、さくらはその麻奈の歌声にそっくりで」という話とともに、さくらの心臓のドナーについて尋ねました。
先生は「ドナーについては原則秘密」としながらも、歌声の話を聞いて「不思議なこともあるものですねえ」と。
牧野が「はい、さくらと出会った時も、麻奈が導いてくれた気がして」と返すと、先生は笑顔で「そうですか」と答え、会話はそこで終わっています。
ここで気になったのが、牧野の話は「歌声がそっくり」だの「導いてくれた」だのと、これまでの話を追っていれば理解できるものの、初めて聞いた人にとっては間違いなく荒唐無稽であろうものにも関わらず、先生は否定してかかるどころか、むしろ嬉しそうな声色にすら聞こえる反応をしているというところです。
(その目は優しかった)
そんな先生の反応をじっと見つめた牧野。
診察室を出たところで出迎えてくれたさくらと会話を交わしたあと、その横に現れた麻奈の方をしばし何も言わずに眺め、さくらに怪しまれています。
果たして、この先生の笑顔は何かを伝えているのか、そしてその笑顔を見つめた牧野は何を思うのか………
さくらの歌声
「麻奈そっくりの歌声」と称されるさくらの歌。
これまでは「いつからか急にこんなふうに歌えるようになった」とだけしか語られていませんでしたが、「さくらの歌声が麻奈そっくり」というエゴサの声を聞いた夜、さくらは琴乃に対して「手術の後から、急にこんなふうに声が出るようになって」と、はじめて具体的な時期に言及しています。
つまり、極端に言い換えると「”誰か”の心臓を移植されたあとから、麻奈のような声で歌えるようになった」ということです。
もう半ば答えのようなものですが、果たして今後それがどう影響してくるのでしょう。
個人的には、さくらがしきりに「意識しなくても自然とこのように歌える」と言っているところが気になっています。
今回、「意識してあえて”麻奈のよう”と言われる普段の歌い方を変えてみる」ことにチャレンジしているシーンがありましたが、
意識的ではなく何かが「できてしまう」というのは、逆に言えば「意識してそれをすることができない」、つまり再現性がない状態と言えましょう。
つまり、「あるとき急にできるようになった」ということはその逆も然りで、「あるとき急にできなくなる」可能性だってあるということです。
で、そのさくら。
一問一答でこんなことを話していて、それがずっと引っかかってるんですよ。
――逆に今まででいちばん悔しかった瞬間は?
川咲 それまでの当たり前が、当たり前じゃなくなったとき……ですね。
この一言、そこはかとなく不穏な雰囲気が漂います。まさかここにかかってきてしまうのか、それとも杞憂に終わるのか……
ああ、いやどすねえ、いやどすねえ……………
「誰かの声」と「自分の歌」
ちょっと本筋からは逸れますが、重要なことだと思うので触れておきたい部分があります。
この手の話でもう一つ引っかかるのがあってですね…
その麻奈が、「アイドルの頂点には、他の誰でもない自分だけの歌を歌えるようにならなきゃたどりつけない」と話しているんですよね。
これがどういう文脈での発言か、というところまでは定かではありませんが、さくらについてはみんなが異口同音に「麻奈のような歌声」と称している現状に対しては非常に痛烈な一言です。
莉緒が琴乃に対して放った「長瀬麻奈の妹である限り、あなたはこの先へは上がれない」という一言とも通じるところがあり、琴乃とさくら、それぞれのユニットのリーダーに共通の問いが投げかけられている、とも取れます。
この「他の誰かではなく、自分」というテーマについては、そういえば「月下儚美」でも「私だけの特別な輝きだと 教えてくれた隣の君に 本当の居場所 見つけたんだ」という歌詞があったり、「SUNNY PEACE HARMONY」でも「人生のヒロインはいつでも 自分だと気が付いて 早く」という歌詞があったりと、いろいろなところに通じているような感じもあります。
また機会があれば改めて検討していきたい話題ですね。
NEXT VENUSグランプリに現れる、麻奈の亡霊
琴乃は「長瀬麻奈の劣化コピー」か
スタジオで琴乃と出会った莉緒は、琴乃に対し「長瀬麻奈の劣化コピーでしかない」と投げかけました。
が、果たしてそうだったのでしょうか?
エゴサの場面で「佇まいが似ている」とコメントされていたほか、第2話で駅前で歌っていた際には、道行くおばあちゃんに「あなた麻奈ちゃんにそっくりね」と声をかけられていました。
また、星見プロ戦闘力ファイルにおいては、ダンスの項目で長年鍛錬を重ねてきた遙子さん、天性のセンスがある芽衣、そして麻奈に並ぶ◎の評価を得ています。
これらのことから、姉妹ということも大いに作用はしながらも、ビジュアル・ダンスの面では、決して麻奈に引けを取らないだけのものがあると言えましょう。
それだけでなく、「麻奈の代わりになんとしても頂点を目指す」という意志の強さも同時に持ち合わせており、それが本人の、ひいては星見プロ全体の推進力になっていました。
が、世間の評価は琴乃には向かず、むしろ血縁関係もないさくらに対し、「長瀬麻奈の再来」という二つ名がついてまわることとなりました。
それは例えば誰もがそっくりと口を揃えて評する歌声であったり、根っからの天真爛漫さであったりといった、琴乃が努力を積み重ねても届かない部分に原因があるようです。
この「さくらが麻奈のような歌声を持っている」という点に関しては琴乃も強く自覚しており、終盤ではそれ故に自分のずっと、ただひたすら目指していた「麻奈の代わりに決勝に立つ」ことや、「麻奈が決勝で歌うはずだった歌」までも自分ではなくさくらに託すことを告げました。
それにより、琴乃はこれまで目指していた「麻奈の代わりに決勝に立つ」という目標を失うも、月ストのメンバーから「麻奈のためではないのなら、私達のために一緒に頂点を目指してくれないか」と提案され、ステージに立つ新たな理由を手に入れた…というのが今回のストーリーでした。
「君は君のままでいい」という今話のタイトル通り、琴乃は他の誰かではない自分自身のありのままでNEXT VENUSグランプリに望むことを決意しました。
莉緒に突きつけられた「長瀬麻奈の劣化コピー」という烙印は、もはやそこにはありませんでした。
ずっと麻奈のことを思い描きながらここまで進んできた琴乃が、その麻奈への執着から自由になれたのは、ひとえに星見プロで、そして月のテンペストととしてともに歩んできた仲間がいたから…という非常にいい話です。
が、ところで肝心の「麻奈のため」というところについて、少々引っかかる部分はあります。
さくらは「麻奈の再来」たりうるか
実の妹である琴乃を差し置いて「長瀬麻奈の再来」とされたさくら。
当の琴乃自身からも、その歌声をもって麻奈のリベンジを託される形となりました。
ですが、世間からも言われている通り、さくらは「麻奈の再来」なのでしょうか?
ここでまた、星見プロ戦闘力ファイルを参照してみましょう。
こちらは、主要なメンバーの能力値をピックアップしたものです。
(千紗ちゃんはいつもの贔屓ではなく、メンバー中最下位ということで引っ張ってきています。いつもの贔屓では決してなく)
麻奈は、「歌」「表現力」が最高評価であるだけでなく、その他の能力でもかなりの高水準を叩き出しています。
「星降る奇跡」は伊達ではない、といった能力値で、星見プロには流石にここまでの能力を兼ね備える人材はいないようです。
さくらが歌で並び(ながらもダンス・体力では大きく劣り)、怜がダンス・体力で上回る(も歌はからっきし)のがやっとで、ほかはみんな良くて長所で太刀打ちできるかどうか程度のレベルだということが書かれていました。
さて、ここで注目したいのは、さくらは確かに歌だけ見れば麻奈に匹敵するものを持っているが、その一方で他のスキルに関しては到底敵わないどころかドベの千紗ちゃん(それはそれでかわいい)と同程度の実力しか有していないというところです。
麻奈そっくりの歌には特筆すべきものがあります。しかしながら、「麻奈の再来」と期待した目で見たときに、他の尺度ではそれを充足するだけの実力までは正直持っていないというのが現状でしょう。
???「麻奈の再来や!」
そもそも、「〇〇の再来」って一種のフラグワードじゃないですか。
他にも和製〇〇とかもそうですけど。
期待を煽るだけ煽っておきつつ、当の本人がその過剰な期待に答えきれないというのは非常によくあることです。
ご多分に漏れず、さくらも「麻奈の再来」という期待に対して、歌以外の部分ではその域には遥か及びません。
口コミや報道により、「麻奈の再来」としてさくらが注目されるにつれ、次第にそのレッテルと実際のさくらとの差はかけ離れ、そう遠くないうちに化けの皮が剥がれてしまう…そんな良くない展開が見えてしまったように思えたのでした。
ということで、琴乃単体だけで見れば、長年抱えていた「麻奈の代わり」問題は解決されたように見えます。
しかしながら、大局的に見れば、琴乃が抱えていたその問題はそっくりそのままさくらが肩代わりしただけという、トータルでは何も解決していない状態になってしまったように思えるのは自分だけでしょうか?
死してなお、NEXT VENUSグランプリの舞台に色濃く存在感を残す麻奈。
無自覚、かつ無意識の振る舞いにより、「麻奈の再来」という評価を与えられてしまったさくら。
その存在感に飲み込まれ、その評価を受け入れた先に待っているものは果たしてどのような結末なのでしょうか。
(ところで、以前の「負けないよ」に続いてフラグの話をしましたが、フラグという観点では星見プロはある筋では有名なフラグをもう一個踏んでるんですよね。
それが「バーベキューで決起集会」なんですけど。
「負けないよ」も「〇〇の再来」も「バーベキューで決起集会」も、勝負事という意味ではVENUS PROGRAMと同じ、サッカー・野球の世界でよく言われるフラグです。
今のところ悪い結果をもたらしたのは「負けないよ」だけ(それすらも麻奈のセリフは「負けられないよ」だったので一致するかと言うと断言はできない)だしそもそもそれらが意図して織り込まれているのかどうかすら不明なんですが、こうもよく言われるフラグがバシバシ立ってくるとお腹が痛くなってきてしまいます。いやどすねえ………)
ということで、第8話のお話でした。
(今週とても忙しくて書き終えるのがやっぱり第9話直前になってしまったし、忙しいゆえに内容を考える暇もいまいちなくてとてもつらい)