流川運河のほとりに生えている木

「高尾奏音界隈のデイリースポーツこと弊ブログ」

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IDOLY PRIDE第9話「もらった勇気を抱きしめて」考察

いよいよNEXT VENUSグランプリもベスト8の戦いが繰り広げられています。

そして、星見プロにまつわる謎もついに解き明かされ………

 

 

 

 

振り返り:ついに秘密が明かされ、グランプリはクライマックスへ

今回は、長い間伏せられていた秘密の部分がいよいよ明らかになった回でした。

まず、「さくらの移植された心臓は、麻奈のものであった」ということ。

この可能性はかねてから度々指摘されていましたが、第9話においてついに公言され、さくら本人にもはっきりと伝えられた形となりました。

改めて、この事実を示唆する内容を含んだ関係図を1年前から仕込んでいた用意周到さに脱帽するところです。

 

またもうひとつ、これまで芽衣以外には内緒にされていた「麻奈の霊が今もここにいる」という秘密も、どさくさに紛れてさくらにだけは明かされました

そのことにより、麻奈からのメッセージも牧野と芽衣を通してさくらに伝えることができるようになりました。

 

「さくらの心臓が麻奈のものである」という事実は琴乃に伝えられた一方、幽霊の件は琴乃に対しては伏せておくようにと、麻奈から口止めをされていました。

 

これまで伏せられていたこの2点に一気に踏み込んできたことで、星見プロにまつわる物語は一気に加速したように感じます。

NEXT VENUSグランプリも残すところあと準決勝と決勝のみ。

どのような結末に向かっていくのでしょうか。 

 

振り返り:麻奈のプライド、そして託される願い

さくらに麻奈の存在が知られたことで、麻奈は芽衣と牧野を通して間接的にさくらと対話できる状況になりました。

 

さくらが、琴乃から託された”麻奈が決勝で歌うはずだった曲”を歌おうとしていることに対し、麻奈は「私の歌なんて歌わなくていい」と訴えます。

続けて、
「それはさくら自身の歌ではないから」という理由と、
「歌い手自身が何を考えているのか、誰に向かって歌っているのかなど、聞き手は敏感に察知する」
心の底から自分にしか歌えない歌を歌わないと、トップアイドルにはなれない
「さくらが向かい合わなければいけないのは、琴乃でも麻奈でもなく、応援してくれる人たちだ」
という根拠を伝えました。

これこそが、麻奈がアイドルとして生き、NEXT VENUSグランプリ決勝という今の星見プロよりも先の領域にたどり着く中で培った信念と言えるでしょう。

 

その上でなお「この心臓が麻奈のものであるなら、自分が責任を持ってあの歌を歌う」と主張するさくらでしたが、麻奈は更に強く自分のメッセージを伝えます。

「決勝であの歌を歌えなかったのは残念だが、だからといって誰かに歌ってほしいとは思わない。その残念な思いを晴らすには自分がステージに立って歌うしかない。私の歌は私だけのものだから」
「それよりも、琴乃とさくらにアイドルの頂点に立ってほしい
「麻奈の目からは、その可能性が十分にあるように思う。だが、ふたりとも”自分の歌”を見つけないと頂点にはたどり着けない
「仲間としてライバルとして、星見プロの中でお互いに切磋琢磨して”自分の歌”を見つけた先に、月のテンペストとサニーピースとして頂点に立つところが見たい」
それ(頂点に立つこと)が、たったひとつ”麻奈のやり残した願い”を叶えることにもなる」と。

 

その願いを受け取ったさくらは準々決勝当日、事前の記者会見の場でドナーの噂が流れていることに触れ、
「この国ではプライバシーや公正さから、提供者・非提供者双方にお互いの情報は明かされない。でも、ドナーが誰であれ伝えたいことはひとつ。
今日のステージは、私の全ての想いを込めて歌わせてください」と宣言し、”麻奈が決勝で歌うはずだった曲”こと「song for you」を、「麻奈の代わり」ではなく、「自分の想いを込めた歌」として披露しました

結果、サニーピースは見事勝利を収め、ベスト4へと駒を進めたのです。

その先に待ち受けるは、予選2位通過、そして麻奈の無敗記録へ王手をかけつつあるTRINITYAiLE。

果たして、サニーピースはそのTRINITYAiLEを打ち破り、頂点へと進むことはできるのでしょうか……?

 

考察:麻奈の願いについて

今回の重要なポイントとして、麻奈からさくらに願いが託されたところがあります。

大きく分けて、「”自分の歌”を見つけ、頂点に辿り着いてほしい」というものと、もう一つ取り上げたいのが「琴乃には幽霊になった自分の存在を明かさないでほしい」いうもの。

この2点に関して検討していきたいと思います。

 

「琴乃には明かさないでほしい」

ここまで芽衣以外には麻奈の存在を秘密にしてきた理由として、牧野は「みんなには、特に琴乃には内緒にしていてほしいというのが麻奈の希望だった」と話しています。

さくらは「きっと琴乃は喜ぶのに」と口止めを疑問に思っていましたが、麻奈は「喜んじゃダメ。琴乃は私がいないからここまで頑張ってこられたと思っており、自分がいるとわかったら張り詰めたものが切れてしまう」とその理由を口にしました。

 

第2話でもその様子が伺えていましたが、麻奈存命時の琴乃は、麻奈にベッタリだったあまり、麻奈がアイドルとして活動しはじめて疎遠になってしまったあとに自分に降り掛かった問題すらも麻奈に転嫁するような言動をしていました。

そのことから、麻奈も同じく第2話で「自分がいなくなったから、琴乃はやる気になってくれた」という現状認識を牧野に話しています。

つまり、麻奈から見た琴乃は、「ずっと自分に依存してきていたが、事故とは言え自分がいなくなったことでようやく自立できた」というふうに映っており、だからこそ幽霊としての存在が明らかになってしまうとまた琴乃が自分に依存しだしてしまうと考えているのではないでしょうか。

 

しかし、ここは個人的には麻奈に対して異を唱えたい部分かなと思います。

確かに、かつての琴乃にはそういう部分がありました。現に、ここまでやってきたのも「麻奈の代わりにNEXT VENUSグランプリの決勝の舞台に立つ」という揺るがない信念があったためです。

ですが、星見プロに入ってからの琴乃は大きく変わりました。さくらをはじめとしたメンバーたちと共に過ごし、共に切磋琢磨していく中で、ひとりでは見えていなかったことを知り、頼り頼られる関係性を育みながらここまでやってきました。

そして、自分が歌おうと胸に秘めていた”麻奈が決勝で歌うはずだった曲”のこともさくらに託し、ずっと心の拠り所にしていた目標である「麻奈の代わり」ではなく「琴乃自身として」ステージに立つ道を、仲間と共に見つけることができているのです。

そう、琴乃はもはやかつてのお姉ちゃんにベッタリな妹の琴乃ではなく、月のテンペストを引っ張るリーダー・長瀬琴乃なのです。

だからきっと、もう麻奈が心配しなくても大丈夫なんだと、自分としてはそう思います。

 

オーディションを受けに来た琴乃を見てスッといなくなったことを思い返すと、実は当の麻奈自身も、こうした琴乃の成長を全部を全部は見届けきれていないのではないか?という可能性はあります。

でも、せっかく幽霊として現れたことで伝えられる状況にあるのなら、ここまで頑張ってきた琴乃に対して、それを真正面から受け止めた上で麻奈から祝福とねぎらいの言葉くらいあってもいいんじゃないかなって思うのです。

 

「”自分の歌”を見つけ、頂点に辿り着いてほしい」

月のテンペストとサニーピースが頂点に立つことが、”たったひとつ、麻奈がやり残した願い”を叶えることにも繋がるという話がありました。

こちらも、同じく第2話でそのことについての言及が麻奈からありました。

そして、そのとき麻奈は「琴乃がその”やり残した願い”を叶えることができたら、私は成仏できるかもしれない」と話しています。

 

また、思いの丈をさくらたちに伝えきった麻奈は、手から先が透け、有り体に言えばちょっと成仏しそうになっていましたが、さくらの歌声を聞いて回復していました。

これがどういうことなのか、ちょっと考えてみましょう。

 

まず、麻奈がさくらたちに対して語った内容等々を整理すると、以下のとおりです。

「”やり残した願い”を月スト・サニピが叶えることができたら、成仏できるかもしれない」
「”やり残した願い”を叶えることと、月スト・サニピが頂点に立つことは別物だが、リンクしている」
「月スト・サニピにはNEXT VENUSグランプリの頂点に立つ可能性を感じるが、今のままではダメで、”他の誰でもない、自分だけの歌”を歌えないと頂点にはたどり着けない」

ということだそうです。

これはつまり、麻奈がさくらたちに対して「自分が成仏するためのステップ」を示したとも言えましょう。

 

しかし、そこでさくらが歌ったのは、”麻奈が決勝で歌うはずだった曲”こと「song for you」でした。

さくらとしては確かに「今の自分の全ての想いを込めて」歌いましたが、麻奈からしてみれば「song for you」はあくまで麻奈自身の歌で、それも「私と同じ歌声を持つ子にだって、私よりうまく歌えるとは思わない」を強く自負している歌です。

なので、さくらの歌声を聞いて麻奈の体調が元に戻ったのは、麻奈自身が示した「成仏へのステップ」が本意通りに次のステップへ進展しなかったからだったのではないでしょうか。

逆に言えば、そうだとすれば今後月スト・サニピが”自分たちだけの歌”を見つけ、頂点に勝ち進んでいく中でどんどん麻奈の成仏が進展していくということでもあります。

 

第10話では、準決勝に勝ち進んだサニピが遂にTRINITYAiLEとぶつかります。

簡単に勝てる相手ではありませんが、その結果はいかに。そして、麻奈の行く末はいかに………?

 

考察:song for youについて

さて、今回満を持して披露された”麻奈が決勝で歌うはずだった曲”こと「song for you」。

「麻奈が決勝で歌った場合」と「さくらがこうして歌った場合」では聞こえ方がもちろん違いますし、(サニーピースver.)ということは他の誰かver.も当然あるということで、まだ出揃わない段階でこれに関してあれこれ詮索するのもなんかちょっと野暮だなあと思うので、ここでは別の観点で考察を進めていきたいと思います。

 

麻奈は、さくらに対して「『聴いている人は、”誰に向かって歌っているのか”、”歌い手がステージの上で何を考えているのか”、”必死なのか?悲しいのか?嬉しいのか?”を敏感に察知する』からこそ、全身全霊を込められる自分の歌でなければ聴く人の心を動かせない」ということを伝えました。

そして、さくらは記者会見でも「3年前に移植手術を受けた。『麻奈がドナーだ』という噂の真偽については答えられないが、ドナーが誰であれその人に対しての気持ちは変わらない。今日のステージは私の全ての想いを込めて歌わせてください」と宣言した上で、しかしながら自分には麻奈がドナーだとわかった状態で、麻奈に対する感謝を込めて「song for you」を歌っています。

 

観客側からしてみれば、「移植手術が3年前」というのが公言されただけでもだいぶ進歩、というか「3年前って麻奈が死んだ年じゃん」ってなると思うんですよね。

その上、麻奈のいう「聴いている人に伝わる」論も加えると、直接言葉にはしないものの答え合わせのようなものだったのではないかと思います。

 

この準々決勝の結果が「89%」でサニーピースの勝ち、というふうになっています。

LizNoirとTRINITYAiLEがそれぞれラウンド16で91%を叩き出していますが、それに次ぐ数字です。

それも、その2者とも準々決勝では84%、81%と数字を落としていることを考えると、準々決勝という場、それも16組中16位通過のサニピにしては圧倒的なスコアです。

単純な実力だけではなく、その背景・文脈の部分が大きく作用したことは想像に難くありません。

「舞台裏のドラマが、ステージを輝かせる。」というフレーズは当作でよく使われるところですが、今回の勝利にはそこの部分が多分に影響していたのではないかと思われます。

(まあ確かに現実世界でもそういうことって大いにありますよね。わかる)

 

そしてもうひとつ、これらの事情をもっとすぐそばでよりよく知っていた琴乃。

客席から月ストのメンバーと一緒に応援している姿がありましたが、ひょっとしたら彼女にはもっとたくさんのことが見えていたかもしれませんね。

前回の琴乃のパフォーマンスについてさくらが「月のテンペストの長瀬琴乃、という感じ」という表現をしたのと同様に、「麻奈に向けた歌」が向いている矢印が、天高くではなく異様に近くに向いていたことまでも感づいているかもしれません。

「伝わる」は「伝わる」でも、どこまで伝わっているのだろう、というのは想像の余地がありますね。

 

 

終わりに

というように、物語が一気に加速した第9話。

第12話が最終話だということも明かされ、いよいよクライマックスに向けての幕が上がりました。

 

それにしても、前回「麻奈の代わり」の問題が琴乃からさくらに肩代わりされただけという話をしましたが、そこをこうも見事に解消してくるとは。

 

あと、個人的には「自分の歌に全身全霊を込め、聴く人の心を動かせないと頂点にはたどり着けない」というのはめちゃくちゃ好きな考え方です。

そういう信念のあるコンテンツに出会えて本当に良かったと心から思います。