流川運河のほとりに生えている木

「高尾奏音界隈のデイリースポーツこと弊ブログ」

\( 'ω')/ヘーイ 高尾奏音さんの情報・イベントレポに関しては日本一を自負するブログです。

今年もまた、伊藤美来さんのライブの話をしよう(その1)

2017年の伊藤美来さんのバースデーライブが幕を閉じました。

"Island of aquaveil"と銘打たれ開催された今回のライブ、その両部のべ2100人での「大掛かりなさんぽ」を振り返っていこうと思います。

 

 

3度目にして「初めて」のライブ

「Miku's Adventures」と冠された伊藤美来さんのバースデーライブは2015年以来毎年この時期に行われ、今年で3回目になります。

 

2015年の第1回は、2部制のライブのそれぞれに「WONDERLAND」「LOOKING GLASS」と「不思議の国のアリス」にちなんだサブタイトルが付けられ、衣装もアリスの世界観をモチーフにしたものでした。

曲目はろこどるから「ミライファンファーレ」、ミリオンドールから「細胞プロミネンス」など当時の代表作がガンガン使われていたほか(この2曲はこれ以降バースデーライブでは披露されず)、

声優を志すきっかけとなった作品であるカードキャプターさくらの主題歌「プラチナ」やオーディションのときに歌った「赤いスイートピー」といったカバー曲、StylipS曲、特撮コーナーなどで構成されていました。

また、アイマス方面から「Thank you!」が使われていたのも特筆すべき点でしょう。

なお、この第1回から今回まで皆勤の曲は本人初のソロ曲である「Dear Honesty」とこの日初披露された「妄想Realize」、特撮の中でも一際ブチ上がれる「Climax Jump」と「特捜戦隊デカレンジャー」の4曲。

総合的に振り返ると、キャラクター名義の楽曲もあればユニット名義のものもあり、まさに声優としてデビューしてから初のバースデーライブにたどり着くまでの軌跡そのものといったセットリストだったと言えるでしょう。

 

2016年の第2回は、20歳の誕生日直前ということで第1部が「Thanks to 19」、第2部が「Start in 20」というサブタイトル。

詳細はその時の記事を見ていただくこととして、ポイントは「出演作に依存しない、“伊藤美来”らしい」セットリストという点。

「ミライファンファーレ」「細胞プロミネンス」といったそれまでの代表曲を使わず、より自身の想いに沿った選曲をしていたというのが印象的でした。

また、この日はアーティストとしてのデビューシングルである「泡とベルベーヌ」収録の3曲が初披露。

20歳を迎え、新たな一歩を踏み出す希望に溢れたライブとなりました。

 

そして、アーティストとしての1年間の集大成として1stアルバムを引っさげて迎えた今年の第3回。

まず、これまで同様2部制でのライブではあるものの、両部ともにサブタイトルは“Island of aquaveil”。サブタイトルが変わらないというのが初めてです。

次にセットリスト。こちらのサイトが載せてくださっています。(出演作でろこどるとミリオンドール挙げてくれてるあたり個人的に非常に好感が持てる)

今回のライブは、毎年恒例の「趣味」である特撮コーナーを除き全曲が「伊藤美来」としての曲でした。

宇佐美奈々子でもマリ子でもなく、全部が全部「伊藤美来」としての曲なのです。

「なにゃこやマリ子の声優・伊藤美来」としてではなく、今回は正真正銘「アーティスト・伊藤美来」として作り上げた「初めて」のライブであった、というのは今回の最大の意義だったのではないでしょうか。

その他にも、

・過去2回のライブでは幕間の映像で「高級食材当てクイズ」や「ボルダリングで高級寿司・焼肉を手に入れる」といった企画が流されていたが、今回は初めて幕間の映像も含めひとつのストーリーとなっていた(詳細後述)

・初めてアンコールが成立

・初めて物販で「伊藤美来ペンライト」発売(なんとなくペンライト発売まで行くと箔が付くような印象が個人的にある)

といったような「初めて」があちこちに見受けられました。

 

このように、1stアルバム発売というひとつの節目を迎えたこともあり、今年のライブはこれまでとは全く雰囲気の異なるものとなったのです。

特に、セットリストが(Shocking Blueは例外として)アニメの要素が絡まない曲ばかりで構成されていたことは新境地と言うほかありません。

伊藤美来さんはそもそも声優なわけですから、去年までと同様出演作のキャラソンくらいなら歌ってくれるかな、というふうに思っていましたが蓋を開けてみたらそんな予想は一切当たらず。

しかしそんないちオタクが勝手に予想し勝手に決めつけた「らしさ」なんてものともしない、素敵な世界がそこにはあったのです――

 

 

美しき水彩の島を共に歩く

ここからはライブ本編の話に入っていこうと思います。

 

開演時間になり、まず我々を真っ先に出迎えてくれたのはスクリーンに映し出される映像でした。

www.youtube.com

予習を済ませてきた人にはすっかり見慣れた光景だったであろう、今回のアルバムの初回限定盤に収録されている「ワタシイロ」のMVです。

その映像を見ながら、去年のライブでは初っ端から曲のイントロとともにステージに現れ「For you!」→「Take you to My PARTY!!」→「妄想Realize」をぶつけられたな、ということを思い出していました。

この曲の並びは伊藤美来さんによる「My PARTY=自らの20歳の節目を祝うライブへ我々を誘う招待状」であったと解釈しているのですが(過去記事参照)、スクリーンの中で白波を立て大海原を進んでゆくその船はただのMVの中の船ではなく、その瞬間まさに我々を乗せ“Island of aquaveil”、水彩の島へ向かうものだったと言えるでしょう。

 

そして始まる伊藤美来さんの世界。

1曲目は「ミラクル」、2曲目は「Morning Coffee」。

「ミラクル」はアルバムでもOvertureの次に位置しており、歌としては一番手です。

誰しも自分の意思で一歩を踏み出せば必ず素敵な未来が待っている、だから勇気を出してみようというメッセージが込められた希望に満ち溢れた一曲。

「Morning Coffee」も同様に、新しい明日、未来に向かって進んでいこうよという前向きな曲です。

これから始まるライブへのワクワクが詰まったチョイスです。そしてそんなチョイスを本人のソロ曲だけで組めるということ、それが何より素晴らしいことですよね。

 

スタートの2曲が終わるとMCが入り、ライブのコンセプトが「みんなで一緒に“Island of aquaveil”、水彩の島で大掛かりなさんぽをする」というものである旨が伝えられました。

ライブタイトルで「Miku's Adventures」と銘打たれているのに、冒険ではなくひらがなの「さんぽ」(どころか「誕生日のおさんぽ。」)と表現するあたりがらしいというか、根がのほほんとしてるの感じなのが大好きです。

 

続いては3曲連続、「No Color」「ルージュバック」「Moonlight」の本人曰く「伊藤美来ラブソングメドレー」。

「No Color」では「君が指をさしたら 釘付けになって動けない」という歌詞になぞらえて客席を指差す姿も見られました。きっと釘付けになって動けなくなったオタクが多数いたことでしょう。(幸か不幸か直撃は免れた)

個人的には、「Ding ding don」のところで胸にマイクを持っていない右手を置き→その右手だけハートマークにして前に伸ばし→さらにその右手を外側にずらす、という振り付けが印象に残っています。

もしマイクを持っていなかったらハートマークは完成していたのか、あるいは片思いだからハートが半分だけなのか…想像が膨らみますね。

ルージュバック」はライブという場ではより一層輝く曲だったのではないかと思います。

「悲しい曲だけど歌うと気持ちいい」というふうなMCもありましたが、恐らく本人の声のゾーンにちょうどいい音程の曲なのでしょう。それもあってか、生で聴くとCD音源以上に心に響いてくる感じがしました。

圧巻だったのが落ちサビ。ライブ中唯一その箇所だけはセットに腰掛けての歌唱となりました。

もうね、「恋に敗れその失意の身をバーのカウンター席に預けて黄昏れる人」いましたよそこに。元気いっぱいに「ミライファンファーレ」歌っていた頃からは想像できないような大人の伊藤美来さん。いやはや成長した。(どこから目線だよ)

そしてそんな姿勢から繰り出される「ここでお別れしないとね 笑顔で さよなら」の歌声は会場中に響き渡り、更に雰囲気を作り上げていきました。

「Moonlight」は史上初、マイクスタンドが出てきました。

(「Moonlight」って曲のジャンル的にはジャズかブルースかでいいんでしょうか?こういうときに音楽の初歩的な教養すら無いのを悔やむのみなんですが、とにかくこれまでに無いジャンルの曲なのでそういう点を音楽的要素も交えながらペラペラと語れるようなかっこいい人間になりたかった…)

(いろいろ記憶を探っているうちに「ムーンライト・セレナーデ」が近いなと思った。別にストライクウィッチーズで知ったわけではなく高校の選択授業の音楽でこの曲の成り立ちを描いた映画を見ただけ(ウォークマンにはシャーリーとルッキーニ版のしか入っていない)(やっぱりオタク))

この曲はアルバムの中でも2曲しか無い、サックスが用いられた曲です。もう一曲の「Shocking Blue」で激しく鳴り響いているのとは対照的に、静かな宵闇に物悲しく鳴いている、そんな感じを受ける音色です。

 

その音色に、「愛する人はもう去っていってしまった。もう戻れないけれど、それでも思い出だけ抱いて前に進んでいく…」という哀愁の中にも力強さを感じさせる歌詞が重なります。

会場に集まった誰もが静かに耳を傾ける中、マイクスタンドの前でこの今までで最も大人な曲である「Moonlight」を歌い上げる伊藤美来さん。

この光景にこそ「アーティスト活動の1年間の集大成」が凝縮されていた、と思います。

 

以上の3曲に関するMCが挟まった後、史上初の作詞に挑戦した「あお信号」が披露されました。

ファンのことを思い浮かべながら作り上げたという歌詞には、サビに「こんな私だけど 見つけてくれた」という一節があります。

謙虚で誠実な伊藤美来さんの人柄が思い起こされる素敵な歌詞です。

昼の部の落ちサビに差し掛かったときのこと。

「こんな私」のあたりで急に俯いて声が止まってしまったんです。

(余談ですがこの瞬間「9/10ぶり2回目」かもしれないという思いが脳裏を掠めどうしようかと思った)

確かに考えてみれば初の作詞曲の披露、そして目の前にあるフロアは当の「そんな伊藤美来さんを見つけた」人で埋まっていたのですから自分で刺さってしまうのも致し方なし、なのではないでしょうか。

きっと我々では想像もし得ないほど大きな想いと心を打つ要素がそこにはあったのでしょう。

とにかく、昼の部では「目から汗」だったのですが、夜の部ではしっかり歌いきることができたのもよかったです。ほっとしました。

 

 

(その2)に続く